インターネット講座 -(1)-
桃太郎のルーツ(4)
大和朝廷の統一物語原型
「岡山
の桃太郎は吉
備津彦命」
岡山県は桃太郎の伝説地として全国に知られ、県外の人が岡山を
イメージする重要な要素にもなっている。
「桃太郎伝説」の舞台は、岡山市と総社市に広がる吉備路である。
吉備の国は大和と北九州の間に位置し、豊かな土壌と温和な気候に
恵まれ、農業生産力は高く、鉄や塩を作る優れた技術を持っていた。
これらを背景に3世紀から5世紀にかけ、大和や北九州と並ぶ強大
な勢力が生まれ、国家統一など、日本古代の展開に大きな役割を果
たしてきたと言われる。
なぜ、岡山が桃太郎の伝説地として根付いていったのだろうか。吉
備路の重要な史跡の1つ「吉備津神社」に伝わる「温羅(うら)退治」の
伝説がカギを握る。神社に祭られている吉備津彦命(きびつひこのみ
こと)による鬼退治物語である。
古事記には、吉備津彦命は第10代崇神(すじん)天皇の時、皇族の
中から四道将軍の1人として、大和朝廷から派遣され、この地の悪者
で百済(くだら)から来た王子、「鬼の温羅」を退治し吉備国を平定した
と言われている。さらに日本書紀には、後に朝廷の指示で出雲の国
を征伐したことも記述されている。
ところで、この鬼「鬼神の温羅」の正体は、深山に隠れ住んでいた
渡来人を指していると言われている。つまり大和朝廷が「鬼」と言った
のはこう言った「隠」であったと思われる。
当時強大な政治勢力を誇っていた吉備は優れた製鉄技術を持って
いた。当時の大和では鉄は採れず、良質な鉄が採れる吉備は、大和
朝廷にとって最大の戦略地であったのだ。当時の製鉄技術は「たたら
製鉄」と呼ばれ、燃料として大量の木材が必要となる。そのため製鉄
炉の付近の山林は次々に伐採され、土砂の流失や水害の原因と
なった。今年ヒットした映画「もののけ姫」はまさに「たたら製鉄」の環
境破壊を題材にした物だ。「桃太郎ともののけ姫」、こんなところでつ
ながっているから面白い。
という訳で、吉備津彦命の鬼退治は、朝鮮半島から渡来した製鉄集
団と大和朝廷との戦いを物語っている。「NHK歴史発見」(角川書店)
で、作家の藤川桂介さんは桃太郎物語に隠された大和朝廷の野望
は渡来人の本拠地出雲の制圧にあったと読み解いている。
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