インターネット講座 -(1)-
桃太郎のルーツ(2)
盛んな生命力や夢表す
「最
初は
大人向けの民
話」
日本人のほとんどが、幼児期に「桃太郎昔話」を両親から聞いたり、
絵本から読んだ経験をもっていると思う。親は子供を桃太郎のように
たくましく成長してほしいと願っている。
「桃太郎」は室町末期から江戸時代初期にかけて成立したといわれ
ている。誕生から江戸時代にかけての「桃太郎」のイメージは素朴で
野性的な民話であった。しかしその後明治時代に入り「桃太郎」は儒
教的思想に塗りつぶされ、小学校の教科書に登場する。
では、桃太郎の出生の秘密に迫ろう。正直言って作者、年代ともに
はっきりしない。古くは、インドのラーマヤナ物語や中国の西遊記に
起因するともいわれている。
「桃太郎物語」は、せいぜい今から300年前の江戸時代前期の延宝
年間(1673-81年)から元禄年間(1688-1704年)にかけて完成したと
考えられる。元禄のころには、「赤本」桃太郎(現在の大衆紙のような
ものとして出現している。室町時代に作られた御伽草子(おとぎぞう
し)には桃太郎は出てこないから桃太郎物語は以外と新しいのであ
る。
ところで私たちは「桃太郎」はどんぶらこ、どんぶらこと流れてきた
桃の中から生まれたとばかり思っていたが、実は江戸時代末期まで
は、桃を食べたおじいさん、お婆さんが若返って桃太郎を生んだとい
う「回春型」が主流であった。回春型桃太郎は、小さな島国から広い
海洋へ発展しようとした夢や、盛んな生命力を表す物語として誕生し
た大人向けの民話であったのである。
一方、明治時代になった、桃太郎昔話は教訓性を含んでいる点を
評価され、国定教科書に採用された。これが私たちが知っている物語
で、川上から流れてきた桃から生まれたという「果生型」である。
「果生型」桃太郎は、もっぱら修身教育として使われ子供用に変質
させられたのである。このように桃太郎物語は時代の流れに沿って意
識的に変容されてきた。
しかし本当の桃太郎は、素朴、単純、そしてたくましくバイタリティー
にあふれ、生きていくことを説く大人の民話であったことを私たち知っ
ておきたい。
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