「日本むかしばなし」桃太郎(2)


 桃太郎は一行の大将でした。犬ときじと猿がけらいでありました。一 行は鬼が島を目指して出発しました。荒海を越えて、ついに島に到着 しました。島はぎざぎざの岩だらけで、恐ろしい光景でした。


 きじが閉ざされた門を飛び越えて中を見に行きました。しばらくして きじは戻ってきました。
 「鬼どもは酒を飲んでいるところです。」ときじは報告しました、「今こ そ攻め入る絶好の時だと思います。」
 猿は大きな門を何度もたたいて大きな音を立てました。
 「誰だ」と声がして、赤鬼が出てきました。桃太郎はビクともしません でした。
 「おれは桃太郎だ。」と叫びました。「おれはこの島にいる鬼どもをみ んな殺しにやってきたのだ。覚悟せよ。」
 桃太郎はそう言いながら刀をぬきました。犬が子鬼どもにかみつい て 攻撃を開始しました。きじはつっつき、猿はひっかきました。子鬼ども は逃げ出してしまいました。
 酒を飲んでいた大鬼どもはこれを見てすっかり怒ってしまいました。
 「桃太郎だろうが誰だろうが、そんなことはかまわない。」大鬼どもは 言いました。
 「子鬼たちをあんな目に合わせるなんて、許せない。凝らしめてくれ る わ」
 そう叫びながら大鬼どもが一斉に飛び出してきました。桃太郎とそ の  けらいたちはおばあさんが作ってくれたきびだんごをちょうど食べた と ころでした。それでみんなは元気と勇気でいっぱいでした。
 鬼どもはとてもかないませんでした。桃太郎は刀を振りかざし、犬と き じと猿は大将のそばで勇敢に戦いました。
 鬼どもは間もなく降参してしまいました。

 鬼の大将である黒鬼は桃太郎の前にひれふして、涙を流しながら、 許しを乞いました。
 「とてもかないません」と黒鬼は言いました。「どうか命だけはお助け く ださい。」
 「もう二度と悪いことはしないと約束すれば許してやる。」と桃太郎は 言いました。
 「もう二度と悪いことはしないと約束します。」と黒鬼は言いました。 「そ ればかりではありません。私たちの宝物を全部さし上げます。」

 鬼どもは、いろいろな人々から奪った宝物をすっかり桃太郎に差し 出 しました。桃太郎はその宝物を車に積みました。それから犬ときじと猿 とに車を引かせました。こうして一行はおじいさんとおばあさんの家に かえってまいりました。

 この知らせは広がり、間もなく天子様の耳にまで届きました。桃太 郎 はたいへんなごほうびをいただきました。そしてそれからずっとおじい さんとおばあさんと一緒にめでたく暮らしました。

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